アリペイも注目したさるぼぼコインの広がり

古里:学校の話もそうですけど、さるぼぼコインを1年間やってきたことによって、地域の皆さんが「さるぼぼコインでこんなことができたら面白い」って言って下さるようになった。それが一番の成果じゃないかと思っているくらいです。

 住民の方だけでなく、行政も民間の事業者もですね。しかも、地域内だけではなく地域外の事業者からも「さるぼぼコインのプラットフォームを使って、こんなサービス展開させてもらえませんか」という問い合わせがすごく来る。

クロサカ:アリペイとの提携のきっかけも、向こうから来たんですか。

古里:そうです。先方が(中国の)観光客を送客したいということで、コンベンション協会に来られたんです。その時、地域を歩いていたらQRコードが掛かっているお店がたくさんあることに気づかれて、さるぼぼコインの話をしたら、アリペイと同じ仕組みということで、とても興味を持たれたんですね。

 急きょ、その日のうちに面談することになり、こちらからQRコードを一緒にして広げませんか、という話をしたらとても反応が良くて「中国と全く同じ決済体験が何百店舗もできる地域なら、送客する」という話になって意気投合し、2カ月ぐらいで契約したんですよ。アリペイのアクワイアラとしては日本で9番目ですが、預金預かりのある金融機関としては日本初なんです。

クロサカ:行政からは、さるぼぼコインについてどんなお話があるんですか。

古里:18年10月から、飛騨市では窓口手数料をさるぼぼコインで支払えるようになりました。19年4月からは市税を全部さるぼぼコインで払えるようになる予定です。さらにその先、助成金や補助金、生活保護のようなものもさるぼぼコインで出せないか、勉強会を始めたいと思っています。飛騨市が先行していますが、高山市でも準備が始まっています。

日本円に縛られるだけが人生じゃない

古里:地域外では、東京のイーネットワークシステムズという新電力事業者が、さるぼぼコインユーザー専用の料金プランを18年12月から提供していただいています。さるぼぼコインで電気料金を払うと、料金の9%分をコインでチャージバックするというものです。

クロサカ:なるほど。究極の地産地消ってエネルギーにまで行きますよね。

古里:飛騨地域に、地域エネルギー会社はまだないですが、興味を持っている事業者さんはいくつかあります。実は、高山市では7年ぐらい前から「自然エネルギー利用で日本一の市になろう」という目標を掲げていて、NPOが2016年から「enepo(エネポ)」という地域通貨を出しています。山林所有者が切った間伐材と引き換えに、enepoがもらえる。それが今もまだ流通していて、80店舗ぐらいで使えます。

 そのNPO設立時から、ひだしんも関わっていて、enepoの換金作業などを行っています。飛騨は、さるぼぼコインとenepo、2つの手触りのある地域通貨が流通している地域なんです。エネルギーと地域通貨は親和性が高いはずなので、うまくくっつけていけると面白いなと。

クロサカ:もし、実際のエネルギーが地産地消で流通するなら、その取引通貨が日本円である必要はないと思います。むしろ、価値交換の体系が多様な状態が自然で、日本円という法定通貨だけに縛られないのが本来の人間の姿なはず。

 だとしたら、複数の通貨を使い分けたり、その間をつないだりした方が、もっと融通が利くんじゃないでしょうか。それは、日本円にどっぷりに漬かっている人たちからすると、新たなリテラシーが必要になるかもしれない。だからこそ、普及に向けたいろいろな取り組みや、信用が必要になってくるでしょう。

古里:それでこそ「ふくよかな地域」ができるのかも、という思いはありますね。だから、すごく面白いし、可能性はあると思います。飛騨には、まだまだ何とかできる余地があると思っています。

第5回
情報銀行はなぜ「銀行」と名付けられたのか
第7回
「手数料収入が目的ではない」 飛騨の地域通貨が大事にすること