「MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)」とは何か、社会やビジネスをどう変革していくのか──。11月、「日経クロストレンド EXPO 2018」に計量計画研究所理事兼研究本部企画戦略部長の牧村和彦氏と、MaaS Tech Japan社長の日高洋祐氏が登壇。日本のMaaSをけん引する両氏が、その今と未来を語った。

 2018年の後半、最も話題に上ったビジネスキーワードの1つがMaaSだろう。10月にトヨタ自動車とソフトバンクがMaaS領域で電撃的に事業提携し、新会社モネ・テクノロジーズの設立を発表したことで、国内でも認知が一気に広がった。

 MaaSとは、一言で言えば、すべての交通・移動手段をシームレスなサービスとして提供する概念のことだ。生活者はマイカーや自転車などを“所有せず”、代わりに鉄道、バス、タクシー、レンタカーなど既存の交通手段とカーシェア、自転車シェアリング、配車システムなどを組み合わせた“サービスを利用する”。例えば、スマホアプリを使って出発地点から到着地点までをルート検索し、途中の交通手段(タクシー→鉄道→バス→自転車シェアなど)の予約と決済を済ませたうえで、低価格かつシームレスな移動が可能になる。

 現在、最も便利な移動手段は自家用車(マイカー)だろう。しかし、都市部では使う機会が少ない割に所有や維持のコストが高い。また、地方では欠かせない移動ツールだが、高齢者の事故、免許返納による移動手段の喪失などが社会問題化している。一方、鉄道やバスなど公共交通は安価なものの、最終目的地まで直接到達しない「ラストワンマイル問題」がある。もちろん全行程でタクシーを使えば便利だが高くつく。その点、MaaSを活用すれば、最適な交通手段の組み合わせによってドア・ツー・ドアの移動が可能になり、しかもキャッシュレスで実にスマート。経営危機にある地方の公共交通は利用が促進され、大都市ではマイカーによる渋滞や公害問題の解決の一助にもなる。「マイカーは魅力的だが、それと同等か、それ以上のサービスを実現するのがMaaS」と牧村氏は話す。

「日経クロストレンド EXPO 2018」に登壇した、計量計画研究所理事兼研究本部企画戦略部長の牧村和彦氏

 ただし、一口にMaaSと言っても、統合度や機能性によって段階がある。まず、統合されず、各事業者が個別にサービスを提供している段階が「レベル0」。次の「レベル1」は、異なる交通手段の情報が統合されたルート検索サービスが提供されている状態だ。Googleマップによるルート探索や所要時間の案内、国内勢で言えば「NAVITIME」(ナビタイムジャパン)などがそれに当たる。そして、スマホアプリで予約・決済できる段階のレベル2以上は、既に自動車メーカーの独ダイムラーの子会社が提供する「moovel(ムーベル)」や米ロサンゼルスの「GoLA(ゴーエルエー)」などで実現されている。

 さらに上の「レベル3」は、予約・決済に加えて、定額制など専用の料金体系を提供する段階。これを実現しているのが、政府主導でMaaSの導入が進んでいるフィンランドのヘルシンキだ。16年以降、月額499ユーロ(約6万4000円)で市内の公共交通がすべて乗り放題であり、かつレンタカーやタクシー(5km以内)、自転車シェアリングも乗り放題の定額制プランなどを提供する統合アプリ「Whim(ウィム)」を展開。ヘルシンキの人口63万人のうち、登録者は約1割の6万人を超えている。「ヘルシンキではマイカーを保有・維持するのに1カ月当たり約7万円かかるとされ、それより少し安い価格であらゆる移動サービスが受けられる点がポイント。Whimユーザーの公共交通の利用率は48%から74%に増え、逆にマイカーは40%から20%に減る成果を得ている」(牧村氏)。

 そして最終段階の「レベル4」になると、個々の移動だけでなく、ビッグデータを活用した交通の制御やマネジメントにより、都市全体が最適化。誰もが安心・安全に移動でき、環境負荷も小さい、持続可能な都市「スマートシティ」が実現する。まだレベル4に該当するサービスは世界ではないとされるが、このスマートシティの実現がMaaSの本丸といわれている。

 出遅れている日本だが、福岡市で、西日本鉄道とトヨタが中心となり、鉄道、地下鉄、バス、タクシー、レンタカー、自転車シェアリング、駐車場が統合され、ルート検索から予約、決済までできるレベル2の「my route(マイルート)」の実証実験が18年11月から19年3月まで実施される。店舗やイベント情報とも連動し、現地までの最適な移動手段を提供する点が特徴だ。政府も本腰を入れ、6月に閣議決定された未来投資戦略2018の中にはMaaSが組み込まれ、経済産業省や国土交通省で研究会や勉強会が発足している状況だ。

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