※日経トレンディ 2018年12月号の記事を再構成

地下迷宮と形容される東京・渋谷駅周辺が、唯一無二の絶景を擁する“天空の街”へと飛躍する。日経トレンディが選んだ「2019年ヒット予測」の6位は「渋谷スクランブルスクエア」。「100年に1度」とされる再開発の本丸完成により、人の流れが劇的に変わる。

誰も見たことのない景色が! 「天空の渋谷」に観光客が大集結!

 渋谷スクランブルスクエアは全3棟。このうち、2019年度はひときわ高い東棟ができる。渋谷駅の真上、スクランブル交差点をはるか上空から見下ろす地上47階建て、高さ約230mのビルは、東京急行電鉄、JR東日本、東京地下鉄の鉄道3社が手を組んで開発を進めるビッグプロジェクトだ。

 渋谷という街は、すり鉢状でいびつな構造をしている。谷という地形に加え、幹線道路が街を分断するように走り、鉄道路線も複雑に乗り入れていて歩きにくい。13年に東急東横線の駅舎が地下に移り、東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が始まると、素通りする人が増えた。JR東日本の駅別乗車人数では16年度に品川駅に抜かれて6位。ベスト5から陥落している。

 しかし、渋谷スクランブルスクエアは、そんな渋谷の負のイメージを一変させるインパクトがある。東急電鉄、JR、東京メトロ銀座線と路線ごとに離れていたホームが、渋谷スクランブルスクエアの回りに集約される。渋谷を訪れる人は、ほぼこのビルを通るため、名実共に渋谷のゲートウエーとなる。渋谷ヒカリエとの間には、地上に連絡通路が設けられ、乗り換えも格段にスムーズに。“ダンジョン”とやゆされる渋谷駅を攻略しやすくなる。

 なかでも一番の目玉が、最上部にできる展望施設だ。超高層ビルの屋上を全面的に開放するうえに、その下の階にもガラス張りの展望フロアを設けるという個性的なデザイン。新宿や六本木のビル群だけでなく、「晴れていれば富士山まで望める」(東急電鉄)という圧巻の眺望は、渋谷のイメージを大きく変える360度のスカイビューだ。海外の観光客にも人気の渋谷スクランブル交差点をダイナミックに見下ろせるビューポイントはここにしかなく、世界屈指の観光スポットになり得る。

 さらに地下2階から地上14階には売り場面積約3万平方メートルの商業施設ができる。日本初上陸や新業態など、集客力のある店を集めるのは想像に難くない。

 他にも19年秋には、渋谷の歴史を彩ってきた2つの商業施設が装いを新たにする。道玄坂地区では東急プラザ渋谷が4年半の時を経て復活。建設中の18階建てビルに開業し、若者の街のイメージが強い渋谷にあって、成熟した大人が集う空間をつくるという。1階には空港リムジンバスが乗り入れるバスターミナルを設け、遠方客にとっての玄関口になる。建て替えのため16年8月から休業中の渋谷PARCOもまた、旗艦店という位置付けはそのままに、地上19階、地下3階建てのビルに生まれ変わってオープンする。

 再開発の流れは27年度まで続き、渋谷スクランブルスクエアには中央棟、西棟が建設される。三井不動産は宮下公園にホテル、商業施設の建設を進めており、渋谷の回遊性はさらに高まる。

 渋谷再開発が生むもう一つの変化は、ビジネス都市としての吸引力が増すことにある。渋谷駅の南側に一足早くオープンした渋谷ストリームには19年、グーグル日本法人がオフィスを移転する。グーグルは01年、渋谷のセルリアンタワーに日本法人を構えたが、手狭になったため、10年に六本木ヒルズに移転。9年ぶりの渋谷への“里帰り”だ。

 渋谷スクランブルスクエア東棟の中上層階にも総面積約7万3000平方メートルのオフィスが誕生。サイバーエージェントやミクシィなど渋谷近辺で生まれ、大きく育った企業がオフィスを移す。グーグル移転も契機となり、渋谷以外からも有望なスタートアップが次々と大移動する見通しで、さながら渋谷版「六本木ヒルズ」として、IT企業の成功者が集う、憧れの的になりそうだ。

 サイバーエージェント、DeNA、GMOインターネット、ミクシィの4社は18年7月、世界的な技術拠点を目指し「シブヤ・ビットバレー」プロジェクトを発足。サイバーエージェント執行役員の長瀬慶重氏は「19年には1万人のエンジニアを集めて渋谷でイベントを開きたい」と話す。企業の集積効果は大きく、新たなビジネスが次々と渋谷から芽吹くことになる。

 谷から空へ──。渋谷の大変貌は、東京のみならず日本の観光、ビジネス地図を塗り替える地殻変動を起こす。

再開発で生まれる高層ビルはどれも地下直結となる。ひときわ高いのが渋谷スクランブルスクエアで高さ約230m
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