※日経トレンディ 2018年12月号の記事を再構成

日経トレンディが選んだ「2019年ヒット予測」の3位は「誠品生活」。文化を前面に押し出したクリエイティブな店づくりで「アジア最高の書店」と評される台湾随一のブランドが2019年秋、日本に初上陸する。1号店の場所に選んだのは、再開発が進む東京・日本橋だ。

アジア最高の進化系書店が台湾から上陸

 米タイム誌が「アジアで最も優れた書店」に選び、あの蔦屋書店が範としたことで知られる台湾の「誠品生活」が19年秋、日本に初上陸する。

 1989年、台北で誠品書店として誕生。創業者の呉清友氏が押し出したのは、文化の創造だった。重層的にぐるりと並んだ大胆な書棚、緑と水辺を生かした思索空間……。今や台湾に42店、香港に3店、中国・蘇州に1店を構えるが、どれ一つとして同じ店はない。その土地の歴史、文化を踏まえてつくり込み、編集するクリエイティブな店内は他の追随を許さない完成度を誇る。工芸の実演やクラシックコンサートなど、全店で年間5000回ものイベントを開き、毎年延べ2億人を集める台湾随一のブランドに育った。

R79
地下書店街に本格カフェ
文化中心店
洗練されたセレクト雑貨
緑園道店
植栽と水景が映える空間
松菸店
シアタールームを併設

 今回上陸する誠品生活は書籍だけでなく、雑貨や食も含めたライフスタイル全般を編集する百貨店型の店舗。中華圏以外で初の店を東京に出すだけでも話題性は十分だが、その1号店に、銀座でも渋谷でもなく、日本橋が選ばれたことに意味がある。誠品1号店にふさわしい文化が根づく街だからだ。

 江戸時代に五街道の起点として栄えた日本橋は、三井グループのお膝元。三井不動産が往時のにぎわいを再現すべく、商業施設「コレド室町」を開業し、休日も人が絶えないエリアへとよみがえった。その三井が、日本橋に足りない滞在型の「サードプレイス」として、4年がかりで誘致したのが誠品生活だった。場所はコレド室町のはす向かい、1万平方メートルを超す敷地に建設中の高層ビルの2階。三井不動産は、この「誠品生活日本橋」をメインテナントに「コレド室町テラス」を開業すると決めた。

 東京メトロだけでなく、JR総武本線新日本橋駅にも直結し、千葉方面からも人を呼び込める。コレド室町のシネコンは「大規模でないのに全国6位の売り上げ」(三井不動産)と広域集客に成功した実績があり、コレドの拡張でにぎわいが増す。空前の台湾ブームも追い風だ。台湾好きにとって誠品は特別な存在。日本初上陸の台湾の食やコスメなども集う予定で、日本唯一の台湾テーマパークとして聖地化する。

 本好きにとっても画期的な場所となる。店主の企画力が色濃く反映された個性派書店は数あれど、誠品生活日本橋の書籍売り場は約1000平方メートル。この規模で選書が行き届いた店は他にない。

 日本橋では、誠品の考え方に共鳴した有隣堂が書店部分を担当。今年3月、東京ミッドタウン日比谷に試金石となる店を開業し、スタッフ自身が影響を受けた良書を10の本棚に並べたところ、1棚当たりの売上高が旗艦店をもしのぐ全国最高額をたたき出した。有隣堂の松信健太郎専務は「日本では売り場展開に制約をかけてしまいがちだが、いい本は必ず選ばれる」と話す。

 東京の原点・日本橋のポテンシャルをアジア最高の編集力で引き出し、世界に一つの空間を生む。創業者の遺志を継いだ娘の呉旻潔董事長は「文化の香り漂う、価値ある時間をつくりたい」と語る。三井不動産は今後、都心部を中心に誠品を入れ、いずれは全国の「ららぽーと」にも広げたい考え。日本橋から全国へ書の新たな道が延びる。

「本を読む」を生き生きと。消えゆく“新書”を届けたい

誠品生活董事長 呉旻潔氏
 私たちにとって新書とは、人々の目に触れていないもの。台湾の経験を通じ、古い本でも視点を変えて紹介すれば、読者に届けられると感じた。江戸文化が花開いた日本橋だからこそ、この地ならではの文化体験を用意し、本を読む静かな行為を生き生きとさせたい。毎日行きたくなる場所を目指している。

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