また今回、東急があえて地方でMaaSの実証実験を行う背景には、急速に進む高齢化という深刻な問題もある。タクシーやバスといった公共交通は慢性的なドライバー不足に悩んでおり、台数や路線維持すらおぼつかない。そこにMaaSの仕組みを取り入れると、例えば移動需要のピークに合わせて広域でモビリティを融通し合うなど、最適な配車で事業を効率化しつつ利便性を上げたり、そもそも観光需要が増加することで売り上げがアップしたりと、多くのメリットが見込める。

 一方、マイカーでの移動に不安を覚える地元の高齢者にとっては、便利なモビリティの選択肢が増えることで、外出の機会を減らさずに済む。観光客の移動需要の多くは午後に集中するので、午前は地域住民を優先して運用するモビリティを用意するなど、「観光客をメインに据えながらも、地域貢献との両立は可能」(森田氏)とみる。続いて森田氏は、「これまで鉄道会社としてまちづくりを推進してきた。高齢化などの社会変化で街の前提が変わりつつある今、次の100年に向けて最適なモビリティを再構築するのが我々の使命」と話す。

東急は観光をメインとしたMaaSの実現により、地域活性化につなげる狙い
東急は観光をメインとしたMaaSの実現により、地域活性化につなげる狙い

 さらに東急は、伊豆での実証実験に加え、東京・神奈川にまたがる東急沿線でのMaaSプロジェクトの実施も検討しているもようだ。こうした鉄道会社のMaaSへの取り組みをめぐっては、18年4月に小田急電鉄が20年度までの新たな中期経営計画でMaaS推進の方針を示し、9月には神奈川・江の島で鉄道駅からのラストマイルの要となる自動運転バスの実証実験を公道で行った。また、JR東日本も7月に発表したグループ経営ビジョン「変革2027」の中で、移動のための情報、購入、決済をオールインワンで提供する「モビリティ・リンケージ・プラットフォーム」によって、シームレスな移動などの実現を目指す構想を明らかにしている。今回の東急を加えた3社の積極的なトライアルに触発され、今後も国内の鉄道各社でMaaS実現に向けた取り組みが増えそうだ。