近年、オートモーティブ事業に注力するディー・エヌ・エー(DeNA)は、汎用カメラを使った高精度地図の作製や、タクシー乗車が発生しやすい経路の予測にAI(人工知能)を活用している。このほど開催された技術者向けイベントで、その最先端技術の詳細が明かされた。

東京・渋谷のヒカリエホールで開催された「DeNA TECHNOLOGY CONFERENCE 2019」

 DeNAは、無人運転車両の実現を目指す「EasyRideプロジェクト」や、タクシー配車アプリ「MOV」の提供などに取り組む。移動に関連する課題を、インターネット・AIを活用して解決しようという狙いだ。同社が2019年2月6日に開催した、技術の力を生かしたチャレンジをお披露目するイベント「DeNA TECHNOLOGY CONFERENCE 2019(DeNA TechCon)」でも、モビリティに対する課題解決にAIを活用する技術発表があった。

 ここでは、2つのセッションのトピックを紹介していこう。1つは「『モビリティ・インテリジェンス』の社会実装~タクシー運行最適化を実現する機械学習システム~」、もう1つは「車載カメラの画像を使用した3次元点群復元と物体認識技術における深層学習の活用」と題したセッションである。

機械学習でタクシーの効率的な運行を実現

 「モビリティ・インテリジェンス」の社会実装の講演では、タクシーの効率的な運行の実現に機械学習を活用したプロジェクトの事例が紹介された。DeNAが考える「モビリティ・インテリジェンス」を社会実装した事例であり、AI、ITS(高度道路交通システム)、クラウドといった技術を総合的に活用してタクシーの運行を最適化するもの。まず、オートモーティブ事業本部 モビリティ・インテリジェンス開発部の織田拓磨氏が説明を始めた。

 「DeNAでは、東京と神奈川でタクシー配車アプリのMOVを提供している。しかし、日本ではアプリによるタクシー配車は1%程度と、欧米に比べるとかなり低いのが現状だ。タクシー配車を効率化するには、アプリ配車以外の乗車手段に対するソリューションが重要になる。そこで、乗車が発生しやすい経路を示すタクシー乗務員向けのアプリを開発した」(織田氏)。

 同社が「AI探客ナビ(仮称)」と呼ぶソリューションである。タクシーが利用者を見つける際には、どのような道路を通るかといった乗務員のスキルの差が大きく、スキルの巧拙で約2倍の売り上げの開きが生じるという。経験の浅い乗務員でも効率的に利用者を見つけられるように、スキルの底上げをアプリで支援しようというわけだ。

 織田氏らは、道路レベルでの「需要供給予測」「探索の効率化」「複数車両の協調」、利用者であるタクシー乗務員の「ユーザー体験の向上」を目標に、システムを開発した。道路レベルの需要供給予測では、「路上で待っている利用者は事前には観測できない。過去の需要供給情報を観測できるデータから推測する。タクシープローブ情報、直近の乗車数、周辺の乗車数などを使って機械学習で需要を予測した。アプリでは、地図上に次の30分に需要が高いと予測される道路を赤く表示した」(織田氏)。天候の変化などの情報にも対応できるように予測システムを構築した。

AI探客ナビ(仮称)の実証実験風景。右のスマートフォンでアプリが稼働し、タクシー利用者が多いと推測されるルートに誘導する
アプリを使うことで、乗務員の平均的な売り上げと同等の売り上げがスキルの低い乗務員でも得られることが分かった

 探索の効率化では、木探索のアルゴリズムを使いながら、あるタクシーの累計報酬を最大化する問題として解を見つける方法を採用した。木探索は、枝分かれした木の構造のように、特定の事象が起こる要因を分解していく手法。「将来にわたって売り上げを最大化するには、これからどちらに走ったらよいかを、強化学習による最適方針の獲得の問題として解けるようにした」と織田氏は説明する。さらに、タクシー1台ずつの報酬の最大化だけではなく、複数車両の協調による全体の最適化にも取り組んだ。

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