電線大手のフジクラは、ディープラーニングの活用でファイバーレーザーを作るためのウエハ外観の検査を自動化した。決め手は優秀なAIと普通のAIによる連係プレー。普通のAIが製造条件の変化の予兆を察知した直後に、優秀なAIに追加の学習を施して変化対応力を高めて実運用につなげた。

 フジクラが新規事業として注力するファイバーレーザーは、増幅媒質に光ファイバーを使った固体レーザーの一種。ビーム品質が高いことなどから、材料加工用の光源などに使われる。その光の発信源(励起光源)となるのが高出力半導体レーザーダイオードだが、半導体素子製造の材料となるウエハの外観検査には苦労していた。

 外観検査はこれまで、人間が顕微鏡を使って目視で行ってきた。半導体ウエハ上に結晶成長という方法で、半導体レーザーチップの基となるものを作っていくプロセスの直後に、ちゃんと結晶成長できたかどうかを確認する。ミクロン単位のキズを見つけるのは相当にしんどく、精神的にもかなり疲れる作業だった。見極めには技術的に深い知見が求められるので、高度な技術者が黙々とやっていたのが実態だった。

 そのファイバーレーザー向け高出力半導体レーザーダイオードで使うウエハ外観検査の作業を自動化したのは、フジクラとそのグループ会社で高出力半導体レーザーの開発・製造を手掛けるオプトエナジー(千葉県佐倉市)だ。2018年6月1日から製造ラインにシステムを導入して、実運用に入っている。

ファイバーレーザー向け高出力半導体レーザーダイオードのウエハ外観検査システムの概要

正解率は99%以上に

 フジクラ 生産システム革新センター 副センター長の黒澤公紀氏は「ウエハ外観検査の自動化によって、高度な技術者がより知的な業務に時間を充てられるようになった。技術者の違いなどによる判定のブレがなく、安定した判定ができるようになった。判定結果が自動的に記録されるので、記載ミスなども生じ得ない」と導入効果を説明する。

 本ウエハ外観検査システムが安定運用できるようになった大きなポイントは、半導体チップを良/不良か判定して、不良レベルをクラス分けするAIアルゴリズムの正解率が常に安定して99%以上に維持できるようになったこと。安定運用の決め手は、優秀なAIアルゴリズムと普通のAIアルゴリズムの連係プレーにあった。どういうことかを説明する前に本ウエハ外観検査システムの概要について簡単に説明する。

 半導体チップはウエハの表面に複数の回路を焼きつけることで製造される。検査ではまず、半導体ウエハを準備してウエハの一部(小さな単位)を順番に撮影していく。小さな単位の画像には複数のチップがあり、そのチップを1枚ずつソフトウエアで切り出してチップ単位の画像を出力する。その画像をディープラーニング活用による検査AIにかけて、これまで人が行ったように分類(良品、不良品を複数の種別にクラス分け)し、結果を出力する。例えば、キズではないが、キズのように見える埃が乗っているチップは、埃は後工程で除去可能なため良品の種別の一つとなる。

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