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ゼネコンのフジタは2018年夏、ディープラーニングを使い、油圧ショベルによる自動掘削に成功した。将来の建機のオペレーター不足を見越して、さまざまなタスクを自動でこなせるよう技術開発を進める。AIスタートアップのDeepX(東京・文京)と経営共創基盤(東京・千代田)と共に開発した。

 建機メーカーも、測量を自動化したICT建機を開発して、工期短縮や省人化の支援をする。ゼネコンであるフジタが自動掘削技術の開発に乗り出したのは、「さまざまなメーカーの重機を自動化できる汎用性を持たせたかったから」とフジタ 建設本部土木エンジニアリングセンター機械部 上級主席コンサルタントの川上勝彦氏は話す。現場ではさまざまなメーカーの重機が稼働する。すべてに使える仕組みがあれば、自動化のコストが安価に済むはずだ。

日本がAIで勝つのは建設分野

 開発を始める前、フジタはAI(人工知能)活用へ向けて東京大学大学院工学系研究科 特任准教授の松尾豊氏へ相談をした。松尾氏が「これからの日本がAIで勝つ分野」の1つとして常に「建設」を挙げていたからだ。

 松尾氏はAIによる自動化の相談を受ける中で、フジタが持つ遠隔操縦装置に興味を持ったという。遠隔操縦装置は1991年の長崎県雲仙・普賢岳の大規模噴火を契機に開発が始まった。災害現場でも活躍できるよう、遠隔地から映像を見て重機を操縦することを可能にしている。ただ、結局はオペレーターが必要であり、その効率化や災害現場以外の用途開拓も求められていた。松尾氏はその遠隔操縦装置が自動化を実現するのに最適な手段と判断。共同で、17年6月に開発がスタートした。松尾研究室出身者が起業したDeepXが開発を担っている。

 自動化システムのうちAIは、(1)油圧ショベル機の運転席上に設置したカメラ映像によるアームの「ブーム先端」「アーム先端」「バケット」という3点の関節位置の推定、(2)推定位置に基づき遠隔操縦装置に操作指令を与えて掘削する、という2つの用途に活用している。まずは、ライン状に溝を掘削することに成功した。将来的に、建機を自律移動させてさまざまなタスクに対応可能にする。

 (1)の関節位置の推定の過程で、ディープラーニングが、機体の「ブーム先端」「アーム先端」「バケット」にある関節が画像上に写るピクセル位置を推定するアルゴリズムに活用されている。画像は、機体の横から、または、運転席上から撮影される。開発においては、関節の3点に人が印を付けた画像を50万件用意して学習させた。運転席上と横からの画像を合わせて、アルバイトなど20人が数カ月かけて準備した。3関節のピクセル位置を推定後、別のアルゴリズムによるブーム根元位置推定や3次元空間座標への変換に基づき機体の状態を推定し、操作指令へと進む。

運転席上のカメラで撮影をして、3カ所のマーカー(丸の箇所)から位置を推定。さらに3次元位置推定用のマーカーを用いて3次元空間座標へ変換する
運転席上のカメラからの映像。右手の3次元位置推定用のマーカーに3次元の軸が表示されている