7年で国内53店舗・海外13店舗を出店し、売り上げは50億円を超える「焼きたてチーズタルト専門店PABLO」。その成功の裏には、行列のできるスイーツ店を人気絶頂のまま閉店するという“大きな失敗”があった(詳細は前編参照)。その失敗から、嵜本(さきもと)将光社長はあえてレッドオーシャン市場であるチーズケーキに狙いを定め、チーズタルト1本に絞った新業態の立ち上げを決断する。

レッドオーシャンのオンリーワンを狙え

 PABLOを立ち上げるに当たって、嵜本社長は大きな決断をする。パティスリーブラザーズ時代の多品種とは真逆の、チーズタルトのみを展開する専門店への転換だ。その狙いは、パティスリーブラザーズ閉店の原因となった生産効率を高めることだった。

 ただ、1商品だけで勝負するとなると、その商品がヒットするかどうかが成否のすべてを握ることになる。そこでなぜ、チーズタルトを選んだのだろうか。

 「あえて競争の激しいレッドオーシャン市場でオンリーワンの商品を作るのが我々の戦略。なぜレッドオーシャンかというと、マーケットが大きいから。チーズケーキは老若男女問わず好きな人が多く、大きなマーケットだと判断した」(嵜本社長)。

 レッドオーシャンを狙う理由は競合商品がたくさんあって消費者の中で商品のイメージが出来上がっているため、世の中にないものを出したときにそのユニークさが明確になることも大きいという。一般的には、ブルーオーシャンを狙うほうがベターと考えがちだが、嵜本社長の「決断」はそれとは真逆。そして、高級なイメージがあるチーズタルトに狙いを定め、当時チーズケーキで主流だったしっかりとした食感とは真逆の「とろける食感」を打ち出した。

看板商品の「パブロチーズタルト」(直径約15cm)は税込み900円

 ホールサイズを1000円以下という手ごろな価格で販売しているのもPABLOの大きな特徴。これは「驚きを作る」というパティスリーブラザーズ時代から引き継いだポイントといえるだろう。ホールのほうが見た目のインパクトがあり、買った人がぜいたくな気分を味わえる。当初1200円ほどで売ろうと考えていたが、客数が2倍以上になれば同じ利益がとれると見込んで決断したという。

PABLOは2011年9月、大阪・梅田に1号店をオープン

 ただ、客数で利益を増やそうとすると、スムーズに商品供給できるように生産効率を高めなければならない。しかも、パティスリーブラザーズの失敗から、店舗のスタッフには負担をかけたくない。そこで、一次焼成を済ませたタルト生地を店舗に配送し、店舗でチーズ生地を流し込んで焼き上げることで、本来は40分かかる焼き時間を10分にすることができたという。さらに、焼き時間短縮のために試行錯誤する過程でとろける食感のチーズタルトが生まれ、ステーキのように焼き加減の異なる商品を選べるようにしたそうだ。

 マーケットの広い商品に人々が驚く特徴を加え、その驚きをさらに大きくするアイデアをどんどん盛り込んでいく。それが嵜本社長の業態開発および商品開発の真骨頂といえるだろう。

レアな食感の「パブロヌード」(直径約13cm)は税込み680円
しっかりした食感の「プレミアムチーズタルト」(直径約12cm)は税込み1650円