前回は米グーグルのスマートフォン「Pixel 3」を取り上げた。高いカメラ機能などが話題だが、これはハードウエアよりもソフトウエアの能力。ソフトウエアがプロダクトを差異化する時代になったと前刀禎明氏は語る。

 前回は米グーグルのスマートフォン「Pixel 3」を取り上げました。暗所での写真撮影の出来など、カメラ機能の秀逸さが話題です。これは内蔵センサーの感度より、AI(人工知能)や画像処理技術によるところが大きいはずです。ハードウエアそのもので競う時代からビッグデータ解析やAIなどのソフトウエア的な課題解決でプロダクトを差異化する時代になったことを、こんなところからも感じます。ハードとしての性能をソフトウエアが下支えしてプロダクトの価値を高める時代です。

AIの理想的な使い方とは?

 例えば、パソコンやタブレット、スマートフォンなら、ローカル処理とクラウド処理の管理をAIが自動で行ってくれる機能などはいいですね。

 高速なモバイルデータ通信が当たり前に使えるようになった近年は、データもアプリケーションも全てクラウドにアップしておいて、必要なときに端末から呼び出せばいい、という考え方が広まってきました。ですが、それにもそろそろ揺り戻しが来る頃じゃないかと僕は思います。

 12月上旬にソフトバンクの大規模な通信障害が起こりましたが、ああしたトラブルでなかったとしても、電波が入らない環境やネットワークが使えなくなるシーンは常にありえます。今後もおそらく完全になくなることはない。モバイルデータ通信の重要性が増せば増すほど、それが使えないリスクは大きくなります。必要なデータをローカルに持っていることの意味は一層大きくなっているのではないでしょうか。

 僕がパッと思いつくところで言えば、プレゼンテーションソフトの「Keynote」。アプリケーションもそれで作ったファイルもデータ容量がかさみますが、極力、ローカルにも保存しておきたい。いつでも作業ができますし、いざプレゼンというときにネットワークにつながらないといったトラブルを確実に回避できるからです。このように、人それぞれ、手元に置いて好きに扱えるようにしておかないと困るデータやアプリケーションは、きっとあるでしょう。

 各ユーザーのデータをローカルとクラウドに適切に分散させ、これはクラウドにあればいいもの、これはローカルにも持っておくべきもの、といった判断をAIが引き受けてくれれば快適です。ユーザーが意識することなく、ローカルでの処理もクラウドでの処理もシームレスにできて、ネットワークにつながらない時間も含めて不便を感じない――そんな環境が理想的でしょう。

 僕が期待するのは、AIのこういう使い方です。前述したのは小さな一例ですが、要は作業をする環境の構築に人間が時間や労力をかけなくて済むようにするもの。AIにはいろいろなことができますが、人が自ら考えるべきことまで代替させると、人をダメにしてしまいます。

 例えば、自分のスケジュールとワードローブ、それに天気予報などのデータを組み合わせれば、AIがその日に着るべき服を選んでくれるというようなことも、技術的には容易だと思います。ですが、服装などは本来、自己表現に関わるような部分。それはAI任せにせず、自分で考えるべきでしょう。AIには、人をスポイルするのではなく、あくまで人をサポートしてほしいと思うのです。