狙いは「楽天経済圏」の拡大

 楽天がQRコード決済をてこにして楽天ペイの普及に力を入れる理由は、「楽天経済圏」を広げることにある。楽天の国内約9500万人の会員基盤により、楽天の国内EC流通総額は、16年の約3兆円から17年は約3兆4000億円へと13.6%増。楽天カードのショッピング取扱高も、16年の約5兆円から17年は約6兆1000億円まで伸びて21.5%増となった。

 しかし、EC全体では約13兆8000億円、家計消費は約242兆円の市場規模に上る。会員に楽天ペイに登録してもらい、楽天以外のECサイトやリアルな小売店でも使ってもらえれば、決済手数料や膨大なデータが楽天に流れ込む。

 楽天市場内でも楽天ペイを普及させる手立てを打つ。18年7月17日に開催した自社イベントで講演した楽天の三木谷浩史会長兼社長は、18年11月中に楽天市場内の全店舗を、楽天ペイに対応させると表明した。現在は楽天市場内の約半数の店舗が対応するにとどまるが、顧客の決済手段を楽天ペイに集約することで、リアル店でも楽天ペイを使ってもらうきっかけにする狙いがある。

出典: *1:内閣府「平成28年 家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)」1次速報値ベース<br>     *2:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」販売信用業務<br>     *3:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」2015年度推計値
出典: *1:内閣府「平成28年 家計最終消費支出(持ち家の帰属家賃を除く)」1次速報値ベース
    *2:経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」販売信用業務
    *3:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」2015年度推計値

 楽天ペイは電子マネー、クレジットカード決済も対応しているが、楽天は今QRコード決済の普及に注力する。それはQRコード決済が、「日本中の多くの小売店を対象に考えたとき、店にとってもっとも手軽に、それも安価なコストで導入できる、普及しやすいキャッシュレス決済の手段」(諸伏氏)と考えているからだ。

 なお、他のQRコード決済では利用者が自身のスマホにQRコードを表示し、店が読み取って決済する方式が一般的。店側のQRコードを紙にプリントして店頭に置く方式では、なりすましなどセキュリティー上のリスクが高いことが指摘されている。楽天は加盟店にそのリスクを説明して、定期的に異なるQRコードを発行して印刷しなおすことを推奨しているという。

9500万会員の送客効果

 では楽天はどのような手法で、楽天ペイのQRコード決済を普及させようとしているのか──。

 まず店側にとってのメリットは、冒頭で示した紙にプリントしたQRコードを活用することで導入コストを引き下げること。決済手数料は今のところ3.24%と、0%に引き下げたLINEやヤフーに比べると割高だが(7月18日時点)、店舗が楽天銀行に決済口座を持てば、決済翌日に自動入金というサービスも備える。通常は入金まで数日から1週間かかるのが珍しくないところ。資金繰りに悩む中小・零細の小売店にとっては心強いサービスだろう。

 さらに、楽天ペイの背後には、ECで実際に買い物をしている約9500万人の楽天会員がいる。楽天は、ユーザーにも分かりやすいメリットを与えることで店頭への送客効果を示し、小売店の導入を後押ししている。