普及しない一因は、小売店側の負担

 これだけ多様なキャッシュレスを実現するこれまでの決済手段が、幅広く普及しなかった主な理由は2つある。まず前述した現金文化の影響。そしてもう1つが、小売店側、特に中小・零細規模の店にとって、導入コストや加盟店決済手数料などが高く、これらの店に導入が進まなかったことだ。小売店は、決済端末を導入すると数十万円、決済手数料もチェーン店で3%台、中小・零細店だと主に4~5%台を支払う必要があった。

 これに対し、QRコード決済サービスは、小売店の負担コストが、従来の決済手段に比べて格段に安くなる可能性が高い。まず、QRコードに加えて電子マネーなど他の決済手段にも対応した端末が3万円台で提供されるなど、これまでに比べて導入コストは下がっている。

 QRコードを印刷した紙やシールを店頭に用意するだけでも、店頭でのQRコード決済は可能になる。店が支払う決済手数料は、LINEやヤフーの動きによって、事実上0%になる見込みのため、小売店にとっては導入の障壁はないに等しい。ただ、決済の安全性を考えれば、消費者がアプリを使ってスマホにその都度表示したQRコードを読み取る端末、あるいは消費者のスマホアプリでスキャンしてもらうQRコードをその都度生成・表示できる端末を用意した方がいい。

 さらには、多数のATMを全国展開してきた銀行は、その運用コストに耐えかねて、一刻も早くその数を減らしたがっている。この結果、地域によっては消費者は現金の入手が難しくなるかもしれず、これがQRコード決済の浸透を後押しする可能性もある。

普及のカギは消費者メリット

 もっとも、サービスを提供する事業者や銀行、小売店などの思惑通り、QRコード決済サービスが広く普及するためには、避けて通れない課題がある。小売店が得るメリットは明確だが、肝心の消費者にとってのメリットが、小売店ほどに明確ではないのだ。

 特に、クレジットカードやデビットカード、各種の電子マネーが生活にある程度浸透していることが、QRコード決済の普及のハードルになる。これらのサービスを既に使う消費者がQRコード決済サービスを利用したくなる魅力を、事業者側が提供しなければならない。

 ポイント制度や電子マネーに詳しいポイ探(東京・中央)の菊地崇仁代表は、「日本では通勤・通学や日常の買い物の決済手段として電子マネーが普及しており、タッチするだけですぐに決済できる電子マネーに慣れた人にとっては、いちいちアプリを立ち上げないといけないQRコード決済は相当面倒に感じるだろう」と、消費者視点で利便性に疑問を呈す。

 果たしてQRコード決済は日本のキャッシュレス化の本命か。そして勝ち残るのは誰か。詳細はまだ明らかではないが、メルカリは、子会社のメルペイを設立して金融事業の準備を開始。既に一部の流通企業にアプローチを始めている。KDDIもQRコード決済への参入を表明済みだ。本特集では次回以降、QRコード決済サービスを展開する主要な各社の戦略をひも解きながら、QRコード決済の行く末を占う。

第2回
7500万ユーザーの割り勘手段に LINEのQRコード決済の普及戦略