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本連載はオンライン、オフライン双方の企業が挑む「場の革命」を取り上げ、どのような事業変革を目指しているのかを読み解いている。今回は登山アプリを提供するヤマップの「非常識」な取り組みを紹介したい。

 ヤマップは社長を務める春山慶彦氏が2013年に創業したベンチャー企業で、スマートフォン向けの登山地図アプリ「YAMAP」を提供している。登山者にとって、地図は必需品だ。スマホにも地図アプリはあるが、通信圏外の山の中ではデータをダウンロードできず、地図を表示できない。しかしスマホのGPS機能で位置情報のデータは使えるので、あえて地図ソフトを開くと、真っ白な画面に自分の位置を示す点だけが表示される。ここに注目して作られたのが、YAMAPである。

 あらかじめスマホに地図をダウンロードしておけば、圏外でも自分の居場所を確認できるわけだ。昨今は中高年の登山者が多く、遭難事故も心配されるところだが、YAMAPを使えば自分の位置が分かり、遭難を防ぐことができる。

 YAMAPには、登山者同士がつながるコミュニティー機能がある。自分が山に登った際の写真データなどをアップできるので、例えば同じ山に登った人同士で、さまざまな情報を交換している。具体的には、登山計画を立てるときに、「いま雪が降っているので、こんな道具を持っていくべき」といったアドバイスを入手して、準備することができる。登山後に自分の登山体験をアップすることもできる。登山者同士が情報交換することによって、登山者の安全を登山者自身が守るという情報インフラを築き上げている。

 YAMAPのユーザー数は急増しており、18年に100万ダウンロードを突破した。他社のアプリには地図データを販売しているものもあるが、YAMAPは無料。彼らは単なるアプリ・ベンダーではないのだ。見据えているのはアプリビジネスではなく、顧客とのつながりを築いた、その先にある。

YAMAPのサービス(同社Webサイトより)

 YAMAPのWebサイトにあるサービス紹介(上図)を見ると、それがよく分かる。左側には、YAMAP Webサイト上のコミュニティーを示す図がある。アプリは重要なツールだが、事業の本体はむしろ、このコミュニティーにある。ヤマップはコミュニティービジネスを展開する企業なのだ。