味の素「Cook Do(クックドゥ)」の「中華が家族を熱くする。」シリーズがヒット中だ。これまでこのCMの誕生秘話や成功要因、クリエイターを紹介してきた。この記事では食品CMの肝となる「おいしそう感」を作る秘訣などを探っていく。

2018年11月から放送の「干焼蝦仁」編より。大皿で、あつあつの料理カットを挿入

『タンポポ』『南極料理人』などで「食べカット」を研究

 食品CMで重要なのは、「おいしそう」と見る人の食欲を刺激すること。電通のクリエーティブディレクター・佐藤由紀夫氏は、「食欲全開」で初めて「クックドゥ」CMを手掛ける際、「どうしたらおいしそうに見えるか」を研究したという。

 「まず参考に見たのは、伊丹十三監督の映画『タンポポ』(1985年)。同じようにラーメンを食べていても、おいしそうに見えるカットと、そうじゃないカットがあるんです。例えば、カメラに向かって食べ物を見せて、そのまま食べてもおいしそうに見えない。でも我を忘れて食べていて、話しかけられても気付かない、みたいな瞬間は本当においしそうに見える。

 最近の作品で言うと、沖田修一監督の『南極料理人』(2009年)がそうです。登場人物は南極基地の人たちなので、食べることくらいしか楽しみがない。しかも男ばかりだから、人にどう見られるようが、どうでもいいわけです。だから食べている姿自体は、本当にひどい(笑)。だけど見ていると、めちゃくちゃおいしそうなんですよ。そういう“忘我食い”の瞬間を、カメラが気にならないように横から撮ることが理想だと思いました」(佐藤氏)。

 その理想をかなえたのは、岩井克之監督。エステー「消臭プラグ」の殿様シリーズや、松本人志が郵便局員を演じた「日本郵便 バカまじめ」などのCMを演出してきた人気ディレクターだ。最近では松本人志出演でヒットした「MARUCHAN QTTA(クッタ)」なども手掛け、コミカルなCMに定評がある。

 「岩井さんには『食欲全開』の杉咲花ちゃんのオーディションから入ってもらって、今までずっと一緒にやっています。岩井さんに撮りたい映像を理解してもらうことが勝負でした。『何もかも忘れたように食べている瞬間を、ドキュメンタリーを撮るかのように撮ってほしい』と話したら分かっててくれたみたいで、『みなまで言うな』と(笑)。その時に撮った花ちゃん出演の最初のCMが生っぽくて、すごく良かった。そして岩井さんのすごいところはスピード感。撮影はいつも、びっくりするくらい巻いて終わります」(佐藤氏)。

 新作「干焼蝦仁編」の「♪ABCから、Cを取ったらエービッ、エービッ!」という歌は、岩井監督が作詞・作曲したものだ。

 「企画コンテには、『エビを連呼する』と書いてあったんです。そうしたら岩井さんがそこにギミックを付けて、単純で覚えやすい歌を作ってくれた。歌モノって、僕らプランナー側が作って渡すより、監督が作ったほうが絶対にいい感じに仕上がるんですよ。秒数を計算して作ってくれるし、現場も歌で盛り上がってドライブ感が出るので。いつも岩井さんにはおんぶに抱っこ。大変助かってます」(佐藤氏)。

第24回
クックドゥ、大家族で楽しく食べる中華の『共食価値』を強調