←目次 18年上半期ヒット&下半期候補

※日経トレンディ 2018年7月号の記事を再構成

 2018年上半期、ヒットの法則に異変が起きている。経済合理性や機能性だけでは説明がつかない“謎”のヒットが多数出てきたのだ。その現象を観察すると、各業界の時代の変化が浮かび上がってくる。上半期ヒット商品とともに、下半期にブレイクすると予測したものを全16ジャンルで徹底調査した。その食品業界編を紹介しよう。

 食品業界最大のニュースは、カレーの常識が塗り替えられたことだった。インテージの調べによると、17年はカレールウの購入金額が456億円だったのに対し、レトルトカレーは461億円と、レトルトカレー登場以来初めて逆転した。

 カレーは自分の家で作るものではなく、多数のレトルトから各自が食べたいものを選ぶ時代に突入した。共働き家庭が増えて調理時間を短縮したいというニーズに加え、1世帯の家族数が少ないことや、時間差で食事を取るケースが増えたことなどが要因だ。

 レトルトカレーのなかでも躍進したのは、業務用のようなパッケージの「プロ クオリティ」(ハウス食品)。大きな具材がごろごろと入っていることを売りにするレトルトとは異なり、具がルウに溶け込んでいる。見た目は地味だが味は極めて本格派。トンカツやハンバーグと合わせて、ボリュームのある夕食にしやすい、ソースとしてオムライスなどにかけてもよい、とファンを増やした。4袋入りで約400円というコスパの良さも寄与し、今年1〜4月の出荷実績は前年同期比120%、売上高で10億円超えを達成した。

 「時間差家族」「小世帯」は、他にもさまざまなヒットを生んでいる。ヤマキの「使い切りかつおパック」は、1gという使い切りサイズにしたことでヒット。冷ややっこなどを1人で食べる分だけが欲しいという声に応えた。小世帯のシニアをターゲットにした日清食品「お椀で食べるカップヌードル」も、「ちょっとだけ食べたい」というニーズに応えた。

 もう一つの食品ヒットの潮流は、ケーキや高級スイーツのような市販アイス。「明治エッセルスーパーカップスイーツ」(明治)は、アイスとクッキー、果肉入りのフルーツソースなどを何層にも重ねた、ケーキのようなカップアイスだ。「苺ショートケーキ」「ティラミス」など3種の味を発売し、いずれも発売直後は入手困難になるほどブレイクした。「アイスなのにキャラメリゼされている」という驚きのあるオハヨー乳業の「ブリュレ」も、17年4月の発売直後は売れ過ぎて僅か10日で販売休止に。この春に販売を再開し、再び売り上げを伸ばしている。カテゴリーの垣根にとらわれないボーダーレスの商品が、ユーザーの心をつかんだ。

“すぐ食べ”食品の大躍進

【上半期ヒット】レトルトの常識を破った味とコスパ
プロ クオリティ(ハウス食品)

 レトルトカレーでありながらレストランのような本格的な味が売り。具材の形はほとんどないが、デミグラスソースのようなコクと濃厚な風味。夕食にアレンジしやすいと評判になり、今年1~4月の販売実績が10億円超のヒットとなった。

皿に盛ると、ほとんど具材が見当たらない。他の料理のソースとして使う方法もあり、応用が利く

■スーパーのレトルトカレーランキング
ハウス食品の看板の「咖喱屋カレー」に、同社の「プロ クオリティ」が迫る勢いを見せる。その他、本格派をうたうカレーが上位に。50周年のボンカレーゴールドも伸長

注)17年5月~18年4月。KSP-POS調べ

【これもヒット】
●スパイスフルカレー(ハウス食品)
本格的なスパイスの香りが楽しめるレトルトカレー。カレーソースに、小袋に入ったスパイスを振りかける。2月の発売後、3カ月で50万個販売し、好調に推移

●ボンカレーシリーズ(大塚食品)
50周年のボンカレーも好調。1~4月の売り上げはシリーズ全体で前年比130%に。発売当時の味を再現した「ボンカレー50」も発売


【上半期ヒット】コンビーフを使ったTKGの進化系
K&Kたまごかけごはん専用コンビーフ(国分)

 1951年から販売しているK&Kコンビーフの新商品。「コンビーフの食べ方を教えて」という問い合わせが多いことから着想した商品で、スマッシュヒット。SNSでも話題に。

【これもヒット】
●寺岡家のたまごにかけるお醤油
天然醸造のしょうゆにかつお節や日高昆布のうまみをブレンド。卵料理に合う。150mlで約300円とやや高価だが、「インバウンドで火が付いた」(ドン・キホーテ)


お菓子なアイス

【上半期ヒット】カップアイスとケーキを融合したぜいたくスイーツ
明治エッセルスーパーカップスイーツ(明治)

 ビッグサイズのカップに、アイスとクッキー、果肉入りフルーツソースを重ねた。「ケーキのようなアイスが好調」(日本アクセス)。昨年再発売された「苺ショートケーキ」は、発売直後に一時販売を休止したほどの激売れぶり。このスイーツシリーズが大きく貢献し、ブランド全体が前年同期比107%の伸びを見せた。

イチゴの果肉入りソース、ホイップクリーム風アイス、クッキー、カスタード風味アイスの4層構造

【上半期ヒット】高級スイーツのたたずまい
ブリュレ(オハヨー乳業)

 「アイスを焼く」という発想で誕生。アイスを独自の製法で加熱し、パリパリとしたキャラメリゼの食感を再現した。昨年4月の発売当初は予定販売数を大幅に上回り、僅か10日で販売休止に。昨年10月に関東で、今年3月に関西・中部で販売を再開した。

【これもヒット】
●ルマンドアイス
ロングセラーのクレープクッキー「ルマンド」のミニタイプをアイスの中に入れ、もなかアイスに仕上げた。16年に地域限定アイスとして登場したが、反響がすさまじく、今年2月に全国発売となった


小さくなって大成功

【上半期ヒット】食卓で少し食べたいニーズに応えた
お椀で食べるカップヌードル(日清食品)

 カップヌードルなどをミニサイズの袋麺にした「お椀で食べる」シリーズが好調。食卓で「少しだけ食べたい」「もう一品追加したい」といったニーズに応えた商品だ。シニアから支持され、17年度はシリーズ全体で計画比178%を達成しているという。

【上半期ヒット】少なくしたことでブレイク
使い切りかつおパック(ヤマキ)

 1袋1gの小容量で小分けした、使い切りタイプのかつお節パック。ユーザーからの「1度で使い切れるサイズのかつお節パックが欲しい」という要望をヒントに17年2月に発売し、ヒットした。今年4月の出荷数は前年同月比143%と好調をキープ。

【上半期ヒット】世界初のルビーチョコレート商品化
キットカット ショコラトリー サブリム ルビー(ネスレ日本)

 天然ピンク色のルビーチョコレートを、世界で初めて商品化。キットカットの高級ライン「サブリム」として限定発売した。「今注目の素材。今後商品が増えそう」(チョコレート探検家のチョコレートくん)。

【上半期ヒット】ビスコの顔が過去最高売り上げ
ビスコ 焼きショコラ 発酵バター仕立て シンバイオティクス(江崎グリコ)

 85周年の「ビスコ」が過去最高売り上げを達成する見込み。理由は、大人向けの新顔が好評を得ていること。特に「焼きショコラ」はココアパウダーを多く含むリッチな味わいで、大きく伸長。「シンバイオティクス」は乳酸菌と食物繊維を含み、健康を気遣う層にフィット。「子供向けの既存商品に、大人需要がプラスオンされて伸びている」(スーパーのPOSデータ分析を行うKSP-PS)。

■新商品がブランド全体の売り上げをぐんと伸ばした

新商品が出た18年2月以降は特に売り上げがアップ
注)KSP-POS調べ

【ブレイク候補】豆腐の概念を覆すチーズのような風味
BEYOND TOFU Miracle Protein(相模屋食料) [期待度 ★★]

 老舗豆腐メーカーが開発したチーズのような豆腐。低脂肪豆乳ににがりを加え、さらに発酵させて仕上げた。乳製品は使用せず、原料は100%植物性なのに、チーズのような風味やコクが味わえる。「当初の予想の2倍の売れ行き」(相模屋食料)。今後、使い方の提案がSNSで広まると一気に伸びそうだ。

キューブタイプ。サラダやピザなどのトッピングに
ブロックタイプ。チーズのように削り、パスタなどに振りかけてもおいしい

【ブレイク候補】切る手間が省けて保存もラクチン
切れてる!サラダチキン(ニチレイフーズ) [期待度 ★]

 大ヒットしたサラダチキンの新顔。ジッパー付きの袋に軟らかいサラダチキンが、スライスされて、冷凍された状態で入っており、使う分だけ取り出せる。350gと大容量でコスパも良く、ストック食材として最適。「完成品が主流だった冷凍食品の新潮流。配荷店舗数は多く、期待できる」(日本アクセス)。

【これもヒット】
●明治 スプレッタブル バターの新しいおいしさ(明治)
バターをメインにクリームチーズ、なたね油、塩だけで作った新タイプのスプレッド。乳化剤や保存料などは使わず、軟らかさが特徴だ。17年11月の発売以来、販売計画に対して2桁増を記録

●ドン・キホーテ×カルビー レインボーポテトチップス─なないろ出汁味─
ドン・キホーテとカルビーが共同で、昆布など7種類のダシを使用したポテトチップスを開発。今年2月下旬発売で、初回数量限定分10万個はすぐに完売。5月から再販売されている

●ノアール(ヤマザキビスケット)
ブラックココアとバニラクリームのクッキー。ライセンス契約が終了した「オレオ」と似ているが、「ノアールのほうが安い。業界で話題」(菓子卸の山星屋)

●肉ガブッと!ぶ厚いとんかつ(マルハニチロ)
ボリュームのある肉料理が売りの冷凍食品「肉ガブッと!」シリーズ。1個44gある極厚とんかつが夕食にも向くという点で人気に。マルハニチロの17年秋季新商品のなかで最も好調

●きざみ青じそ(エスビー食品)
青ジソの爽やかな風味を閉じ込めたチューブタイプ。冷ややっこや納豆、そうめんなどに手軽に利用できる。「チューブの青ジソは他になく、パクチーほど癖もないので、幅広く受け入れられている」(日本アクセス)

●チキンラーメン 具付き3食パック アクマのキムラー(日清食品)
新提案の具材付きの袋麺。第1弾「アクマのキムラー」は、SNSなどではやったアレンジレシピを商品化。キムチの辛さやごま油の風味がアクセントに。計画比約130%を達成

●大粒ラムネ(森永製菓)
森永製菓のロングセラー菓子「森永ラムネ」の大粒版が今年3月に登場。「カーリング男子が食べていた影響もあるのか、森永のラムネが欠品するほど人気」(菓子卸の山星屋)

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