※日経トレンディ2018年7月号の記事を再構成

オーラルケアトップのライオンでさえ攻めあぐねていた若年層を捉えるため、2017年に投入されたのが歯磨き粉と洗口液のシリーズ「NONIO」。発売直後は品薄になるほどの売れ行きで、現在も計画を上回るヒット商品に育っている。狙い通り、これまで口腔ケアに無関心だった若者を捉えたNONIOの仕掛けとは?

柳田洋顕氏
オーラルケア事業部
ブランドマネジャー

1997年にライオン入社後、2004年まで営業に従事。ビューティケア部門の商品開発担当として、07年に「PRO TEC」を立ち上げ。オーラルケアでは、「ビトイーン贅沢Care」を担当。15年から「NONIO」を手掛ける

 歯周病や歯槽膿漏などに悩む40代以上が購買層の中心を占めるオーラルケア分野で、長らく口腔ケアに無関心だった若年層の口をこじ開けたのが、歯磨き粉と洗口液のシリーズ「NONIO」だ。特に売れ行きが際立つ洗口液は、2018年1~3月の計画比で約1.7倍。39歳以下の購入比率はジャンル平均が24%にとどまるなかで33%に達し、しかも6割以上が新規ユーザーという。

 NONIOがうたうのは口臭抑制の効果で、必ずしも新しい機能ではない。だが、「SNSの普及で、ちょっとしたことで嫌われるリスクが高いのが、今の若い世代。髪形や服装は自分で直せても、口臭は自覚できないため、最大の悩みになっていた」(ライオン オーラルケア事業部ブランドマネジャーの柳田洋顕氏)という。

 この「人に嫌われたくない」という若者のインサイトを刺激するために同社が取ったのは、あえて機能訴求を抑えるという逆張りの戦略だ。例えば、タレントのローラを起用した現在のCMでは、友人や仕事場での会話シーンと共に、「口を開けば、心が近づく。ひらけ、自分。」というメッセージをアピール。もちろん、清涼菓子のように口臭を香りでマスキングするだけではない本格機能を備えるが、CMでは最後に「口臭科学から生まれた」と流すだけ。効果や成分を連呼しがちなオーラルケア商品らしからぬ手法だ。

「無関心な若者にいくら機能を訴求しても響かない。対人関係がうまくいく、自分らしく過ごせるというポジティブな生活価値に転換して伝えることで、初めて振り向いてもらえた」(柳田氏)という。また、顔を近づけて話をすることが多くなる映画館やサッカーの試合会場で50万個配布するなど、サンプリングにも工夫を凝らした。

 NONIOの購入層は7割近くを女性が占める。これは、スタイリッシュなCMと同様に機能訴求を抑えた洗練されたパッケージデザインによるところも大きい。店頭では、歯磨き粉と洗口液を一緒に陳列することで同時購入を誘った。いずれも標準的な商品より1.2~2倍の高価格だが、価値観をフィットさせることで若い世代の消費を促せるというお手本のようなヒットだ。

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