※「最新マーケティングの教科書2018」(2017年12月14日発行)の記事を再構成

アドフラウドとは、人間がアクセスしたように見せかけて広告を表示させ、広告費を詐取すること。米国では損失額が年間8000億円規模。手口は年々高度化、巧妙化している。国内の不正広告の割合は米国ほどではない分、危機意識が薄い。早期の対策が重要だ。

 アドフラウドとは、ネット広告配信において起きている詐欺的な不正行為のこと。ボットなどの自動プログラムを悪用して不正にインプレッションを増やしたり、広告クリックを水増ししたりする手口が使われている。人ではないロボット相手に広告が表示されることになるため、広告主にとっては広告費の無駄打ちになってしまう。

 米国では、アドフラウドによる損失額は2016年で約72億ドル(8000億円規模)に上ると推測されている。それでも早くから対策に取り組んできたことで、17年は損失額が縮小に転じる可能性が出てきた。一方、国内の不正表示は、アドネットワークにおける総インプレッションの4%程度とみられ、米国ほどではない。しかしながら対策が後手に回っているため、今後増える余地はある。不正な広告表示を減らすことができれば、その分、広告のコスト効率が上がり、CPA(顧客獲得単価)など広告効果指標の改善が期待できる。

 まず、何がアドフラウドに該当するのか? アクセスがボットだからといって不正とは限らず、また人ならば適正ともいえない。

 米インタラクティブ広告協会(インタラクティブ・アドバタイジング・ビューロー、IAB)は、正当なユーザーからではない、無効トラフィック「IVT」(Invalid Traffic)を2つに分けている。

人を装ったアクセスが巧妙化 早期の対策が求められる

図1 IVT(無効トラフィック)の種類
※米インタラクティブ広告協会(IAB)Ad Impression Measurement Guidelines 出所:「ビューアブルインプレッション測定ガイダンス」(2017年5月)日本インタラクティブ広告協会
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図2 日本国内のインターネット広告の状況
出所:日本国内にて2016年10月~12月に配信されたキャンペーンの計測インプレッションを基に算出(インテグラル・アド・サイエンス調べ)
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対策すれば広告効果改善

 1つは、検索エンジンのクローラーなど悪意のないボットやスパイダーと呼ばれる情報収集ロボットによるインプレッション。もう1つは、悪意のあるマルウエア、アドウエアなどによるトラフィックや、人為的に生成された不正トラフィックなどのインプレッションだ。アドフラウドは後者に当たる。

 また機械的に生成される、人以外によるトラフィックをノンヒューマントラフィック(Non-Human Traffic NHT)と呼ぶこともある。むろん人であっても、人海戦術でアクセス数稼ぎをして社内トラフィックの割合が不自然に高いようなケースは、そのインプレッションを排除して広告効果を考える必要がある。

 アドフラウドが厄介なのは、年々その手口が高度化、巧妙化してパターンが増えていることだ(図3)。従来は、生成したサイトに広告枠を設置し、そこにボットを利用してインプレッションを発生させることで広告収益を詐取するのが一般的だった。それが近年では、ボットを使って不正なCookie(クッキー)データを作り出したり、人によるアクセスに見せかけるために深い階層までアクセスしたりと、判別が難しくなっている。

人を装ったアクセスが巧妙化 早期の対策が求められる

図3 アドフラウドの類型
出所:「アドフラウドに対するJIAAステートメント」(2017年8月)日本インタラクティブ広告協会 技術委員会
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 対策支援企業も知恵を絞っている。DSP(デマンド・サイド・プラットフォーム)事業のフリークアウトは、CVR(成約率)を予測するアルゴリズム開発の一環として、ボットを排除するロジックの強化に努めている。またDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)事業のインティメート・マージャー(東京・港)は、数千万件の不正なCookieをブラックリスト化し、広告配信リストに組み込むことで、そのインプレッションに対する広告配信を防ぐ。

 広告主企業はアドフラウドの実態と対策を理解し、対策を取ることで広告効率の向上を図る必要があるだろう。

参考になる本
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『ザ・アドテクノロジー
 データマーケティングの基礎からアトリビューションの概念まで』
菅原健一、有園雄一、岡田吉弘、杉原剛著
翔泳社 2200円
RTB(リアルタイム入札)、DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)、第三者配信、アトリビューションなど、最新アドテクノロジーの概念を一線の識者が詳しく解説。データの活用に基づくアドテクの現況が理解できる。
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