日本と米国のP&Gで17年間ブランドマネジメントやイノベーション方法の確立などに従事した後、ダノンジャパン、ユニリーバ・ジャパン、日産自動車、資生堂など複数のブランドを擁する企業でブランドマネジメント組織を指揮・構築。組織強化を通したブランドの成長を実現。2018年1月より現職。博士(経営学 神戸大学)

これまで一番達成感を得た仕事は?

 日本のヘリテージ企業へ、持続的な成長を可能にするブランドマネジメント体制を導入した経験です。マーケティング組織の構築も、「目的」と「資源」の運用、つまり戦略次第であることを自身の体験として確認できました。そして、ブランドマネジメント制が機能するためには、マーケティング組織やマーケターの強化に加えて、財務機能の充足、R&Dや営業と連携する仕組みの確立などが極めて重要であることなどを実践を通して理解できました。

商品・サービス、事業開発で重要だと思うことを3つ挙げてください

① ブランド、特に競合とターゲット消費者と便益を明確に定義すること
② マーケティング計画の全体設計図を描いておくこと
③ プロジェクトごとにラーニング(経験値)を得ること

これから仕掛けたいことは?

① 自律的に成長するための、マーケティング組織構築の支援
② 場創造としてのマーケティング計画実現の支援
※優先順位順

最近気になっている言葉や現象、技術は?

① FinTechのブランドや購買行動への影響
② 広告の定義・役割の変質
③ 所有の概念の変質
※優先順位順

尊敬するマーケター、経営者、研究者…と、その理由は?

アル・ライズとジャック・トラウト。
 『マーケティング22の法則』などで、パーセプション(認識や知覚)の管理がマーケティングではとても重要であるという考え方を提唱し、実践的なマーケティングの礎を作ったと思います。

最近、読んだ本で仕事の参考になったものは?

『権力の終焉』(モイセス・ナイム著)
 規模が巨大であるなど、単純な数的優位を誇ることがすなわち絶対的な優位とはならないことを示す兆候について説明しています。基本的には政治や軍事についての話ですが、同様の事象はマーケティングにも起きるかもしれないし、実際、すでに起きている部分もあります。スタートアップに大企業が翻弄されるというのは、デジタルな分野に限らず、日用雑貨や自動車などの確立された製品市場・業界でも起きています。色々なものがデモクラタイズされた環境下で、これからのマーケティングを考える際に、一つの視点を提供してくれると思います。

AIDMAなどのマーケティング理論や法則で実践、重視しているものは?

① 資源の集中を考えるときに役立つ「パレートの法則」と「ランチェスターの法則」。
② 『マーケティング22の法則』で示されている、特に「知覚の法則(The law of Perception)」、「一撃の法則(The law of Singularity)」はブランドを指揮する際に重要な考え方です。
③ 『孫子の兵法』の第四 刑篇で示されている「九天之上、九地之下」は新規導入や新市場創造において重要な法則です。

直近のヒット商品、サービスで気になっているものは?

CtoCサービス
 C-to-Cの分野が隆盛することで、購入時にリセールバリューを考えることが、家やクルマなど限られた分野にとどまらなくなってきました。また、音楽など無形のソフト分野ではこの20年で便益の享受の仕方が大きく変化しました。何百年も続いてきた所有の概念が変化して、個人の所有物が公共物化していくような感覚があります。そうなることでトライアルしやすくなるのか、リピートしにくくなるのか、逆なのか、それともトライアルやリピートという概念自体がすたれていくのか、興味深く感じています。

記憶に残る広告コピーとその理由は?

• サントリーローヤル(詩人ランボー・砂漠のサーカス編)
• スーパーニッカ(魚図鑑編)
• ラーク(ジェームズ・コバーン編)
 いずれもテレビ広告がカッコよく、番組の合間の「幕間の寸劇」として大いに機能していた頃の傑作です。これらの広告が関与していた「30秒程度の極めて短いショートムービーで別世界を堪能したい」というニーズは、いまやYouTubeの大量の動画によって満たされています。テレビからスマホへ、という表面的な事実の裏には、広告の定義や役割が本質的に変わったのではないかと考えます。このような時代がいずれ再来するものなのか、果たして不可逆なのか。興味深く思います。