早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。食品会社を経て、03年にエステーへ。15年に渡りコミュニケーション領域の責任者として活動。04年から動画コンテンツを活用、07年には「ツイッターの中の人」になるなど、ネットコミュニケーションをいち早く取り入れてきた。現在も独自サイト「エステーQ」の編集長を兼ねる。戦略づくりだけでなく、プランナー、CM監督、コピーライター、作詞作曲家として独自のスタイルを築く。震災直後に日本で初めての商品CMを制作、放送。そのミゲルと西川貴教が出演した「消臭力CM」は好感度日本1位を獲得(CM総合研究所11年8月)。ACC Gold、マーケターオブザイヤー(MCEI)、WEB人貢献賞などを受賞

これまで一番達成感を得た仕事は?

 震災後のミゲルプロジェクト。震災によって、テレビCMが自粛する中で何をすればいいか考えた時にエステーの事業ドメインは消臭剤だった。消臭力を売ることに決めた。ポルトガルのリスボン、かつて震災で6万人がなくなった街で撮影したCMが、人に想像以上に共鳴され、認知を超えて、このプロジェクトを好きになる人まで現れた。企業が好きとか、ポジティブな人の気持ちがわき起こり、市場におけるシェアのランキングが変わって、2位が1位になった。消費者は我々よりも敏感だと思った。消費者はこうだと決めつけるのではなくて、時代を瞬時に受け入れるそういうすごさと恐さとの両方を感じた。企業が一方的なメッセージを出して、消費者が動くというのがマーケティングだと思い込んでいたが、消費者のほうがよほど敏感だと感じた。

商品・サービス、事業開発で重要だと思うことを3つ挙げてください

 1つはとことん「顧客の気持ち」を考え、何をしたら喜ぶかを考えること。ターゲットという言葉があるが、それは標的という意味もある。それをお客様と変換して、何をもって喜んでもらうか、それはどんな商品かサービスなのかにつなげる。

 2つ目が喜んでもらうポイントを「チームで共有する」。 和気あいあいではなくて、なぜ喜んでもらうのかという価値観をチームで共有する。

 3つ目はそれをどんな技術を使っても予算内で達成する「達成力」。

これから仕掛けたいことは?

 広告を中心に取り組んできた。予算が少ない中で、何らかのコンテンツを作って、みんなに遊んでもらうというやり方をやってきた。いまコンテンツマーケティングと言われているが、それはまた違う定義になってきている。

 広告的な動画を配信して、感情を揺さぶるのがコンテンツマーケティングであると、狭められて言われている。もっと、本質的なコンテンツマーケティングを、今の時代で仕掛けたいなと思っている。

最近気になっている言葉や現象、技術は?

 「デジタルマーケティング」という言葉。みな周りのマーケター、業界の人たちで定義が異なるから。

 1つ言えることは、デジタルマーケティングが進んでいるのはダイレクトマーケティングであって、マスのブランドマーケティングでは確立されていない。それをいっしょくたにしている現象に違和感と、逆にチャンスを感じる。

 まだ確立はされていないが、今後マスブランディングのやりかたがデジタル上でどんどんできるようになる。実現のための技術は何かを気にしている。

尊敬するマーケター、経営者、研究者…と、その理由は?

 ドミノ・ピザ ジャパンCMOの富永朋信さん。
 予算や与えられた状況下でいつもチャレンジして、何かことを起こしている。1つの会社にいて組織を使ってやるということも重要。けれども冨永さんを見ていると、転職して業種業態がかわっても、そこで与えられた状況でブレークスルーしている。例えば、西友に在籍していたころに、気に入らなければ生鮮食品を返品できるキャンペーンを徹底して打った。アメリカでもその事例は、ウォルマートであったそうだが、それを日本という文化のなかでやり遂げた。生鮮食品の質に気をつけていることを、メッセージとして世の中に広く知らしめた。

最近、読んだ本で仕事の参考になったものは?

 糸井重里さんの「インターネット的」。
 人は何万年も変わっていない、変わってないところにネットという技術を使って、でもネットに縛られずに糸井さんのいうインターネット的な生活をしている。ネットとかデジタルの本質を捉えて、技術を使っているという印象だった。いま読むと、未来を示唆しており参考になる。

AIDMAなどのマーケティング理論や法則で実践、重視しているものは?

 1920年に生まれた「AIDMA」という消費行動は変わっていないが、最も大きな差異は情報量の多さ。AIDMAの前に、さらにAが必要になる。これまでは情報量が少ない、サービスも商品も少ないのでAIDMAで購買が起こった。今は情報量が多すぎるので、AIDMAを起こさせるためのアテンションが必要になる。「AAIDMA」とも言える。

 AIDMAの前のラージのAを作る。一番単純な方法はお金をたくさん使うこと。それが難しい場合は、アテンションを生み出すクリエイティブを作ることが必要。

トレンドをウオッチしている他業界は?

 アプリ業界を見ている。世代問わず、アプリに消費のトレンドが凝縮されている。

直近のヒット商品、サービスで気になっているものは?

 自分の中に最近はない。しいて言えば「セブンカフェ」。なぜ、すごいかと言うと、普通は後発となると差別化するために、香りをつけるとかニッチな方向にいきがちだが、ど真ん中のコーヒーをクオリティを上げ、価格を下げる。ど真ん中を追求して、ヒット商品にしたことがすごかった。

記憶に残る広告コピーとその理由は?

 日本経済新聞社の「諸君。学校出たら、勉強しよう。」
 1984年に地下鉄で目にして、なんて自分の心をえぐるんだと思った。そのコピーが今も頭に残っている。