←目次 「星野流」都市観光ホテルの勝算

高級路線を推し進めてきた星野リゾートが、リーズナブルな都市型ホテルの運営に乗り出す。多くのビジネスホテルが乱立するなか、どんな差別化戦略で後発参入するのか――。
今回、新ブランド「OMO」の記者発表と開業を前に、いち早く真相を取材。そこから見えてきたのは、従来の画一的な客室やサービスの“破壊と創造”だった。「観光」を切り口に、空間デザインを生かして居住性を高めた客室。地域と密着し、インバウンドやコト消費のニーズに応える斬新な人的サービス……。「星野流」が業界に新風を吹き込む。

 都市型ホテル参入の武器に、星野リゾートは「観光」を選んだ。宿を売るのではなく、街をリゾートととらえて“旅を売る”という。密着取材を敢行した。

 東京・JR山手線の大塚駅前、家路を急ぐ人々で混雑する午後6時。30代前後の男女5人が顔を合わせ、一瞬何やら決めポーズを取ったかと思いきや、夜のとばりを破るほどきらびやかなネオン街に、それぞれが消えた。

 一人の男性に付いていく。まずは、50種類以上の具をそろえるおにぎり専門店に入って腹ごしらえ。行列待ちも出る人気店だけに、店主は難しそうな顔で手を忙しく動かしていたものの、その青年の顔を見るや顔を綻ばせ、新たに開発した具の説明を始めた。

 次に向かったのが老夫婦二人で営む天ぷら店。小さな店だが、50年以上も地元民の胃袋を満たしてきた誇りが、揚げ音から届く。老夫婦は、カウンター越しに目を細めつつ、青年に大塚の歴史を問わず語りに話し出した。

 胃袋が満たされたところでスナックへ。30人は優に入れそうだが、年配客で空席はほとんどなかった。青年はここでも顔見知りらしく、そこかしこの酔客から声がかかる。

 大塚の夜の街を、自分の庭のように歩き尽くすこの青年はいったい誰か。彼だけではない。大塚駅に集まった他の4人も、飲食店をはしごしていた。

 彼らの名は「OMOレンジャー」。